ACADEMIC

脳梗塞リハビリセンターにおける
維持期脳卒中患者の歩行改善に向けた積極的
介入の可能性

2019.11.22

ACADEMIC

脳梗塞リハビリセンターにおける
維持期脳卒中患者の歩行改善に
向けた積極的介入の可能性

2019.11.22

背景①

・脳血管疾患総患者数…117万9000人
(厚生労働省「平成26年患者調査の概況」)
・年間発症者数29万人
(滋賀県脳卒中発症登録事業)

医療保険、介護保険、保険外リハビリ

鍼灸師・理学療法士・トレーナーによる個別リハビリを2時間行う。
脳血管疾患リハビリテーション算定期限である180日を超えても、「時間をかけてリハビリをしたい」という維持期脳卒中患者が多く利用。

背景②


これまでに行った研究

「維持期脳卒中患者における歩行周期の特徴」


<結果>

①麻痺側前遊脚期が長い
②麻痺側単脚支持期が短い

“維持期においてもリハビリテーションの機会を設けることが望ましい”

脳卒中治療ガイドライン 維持期リハビリテーション 291-293

実際に維持期脳卒中患者に対し病院でのリハビリ同等である「2時間以上」の個別介入結果の報告は少ない。

<目的>

維持期脳卒中患者に対する歩行改善に向けた積極的介入(2時間個別)が歩行の特徴(①歩行速度・②非麻痺側歩幅・③歩行周期)に及ぼす影響を調べる

<対象>

脳卒中発症から6ヶ月以上経過したもの
杖なしで10m以上歩行が可能なもの

【性別】
男性:13名、女性:2名
【年齢】
中央値:60、Range:38〜76
【麻痺側】
Right:5、Left:10
【下肢Brunnstrom stage】
Ⅲ〜Ⅵ

<介入内容>
・鍼灸師:50分
(醒脳開竅法・頭皮鍼・山本式新頭鍼療法・パルス鍼)

・理学療法士:40分
(理学療法士による動作指導・促通手技を用いた・トレーニング)

・ダブルベルトトレッドミル10分
(左右のベルトが独立して駆動・理学療法士による歩行分析)

・トレーナー: 20分
(スミスマシンやバーベルを用いた高負荷トレーニング)

<介入頻度>
・1回2時間
・週2回×4週

<研究方法>

自由歩行(杖なし)の様子を動画で撮影


<使用機器・ソフト>
・カメラ:Q1615 MkⅡ(AXIS社)120 fps にて撮影
・動作解析ソフトKinoveaにて
・歩行速度・歩行周期を解析

<統計処理>
介入前後でWilcoxon符号付順位検定にて比較 (GraphPad Prism8)
有意水準をp < 0.05とした

書面及び口頭にて十分な説明を行い、同意を得て行った。
(承認番号:19-003)

<結果>
自由歩行速度

自由歩行(通常の楽な歩行)の速度が有意に速くなった

<結果>
非麻痺側歩幅

非麻痺側の歩幅が大きくなる傾向

<結果>
歩行周期変化

・麻痺側単脚支持期(非麻痺側遊脚期)が長くなる傾向
・麻痺側前遊脚期が短くなる傾向

片麻痺患者の歩行速度と時間因子の関係
①麻痺側単脚支持時間は歩行速度と非常に強い正の相関
②麻痺側前遊脚期時間は歩行速度と非常に強い負の相関
(田中惣治ら:麻痺側立脚期の膝関節の動きによる片麻痺者の歩行パターン別の時間因子の分析. 2018)

・麻痺側単脚支持時間延長
・麻痺側前遊脚期時間短縮

→歩行速度向上

片麻痺患者の非麻痺側歩幅と機能障害の関係
①麻痺側下肢の支持性(膝関節伸展筋力,股関節内旋筋力)
②両側股関節・麻痺側足関節可動域(両側SLR,麻痺側股関節伸展,足関節背屈)(篠塚敏雄ら:慢性期脳卒中片麻痺者の歩行速度・非対称性と機能障害の関連性. 2017)

『麻痺側支持性向上関節可動域拡大』→『麻痺側単脚支持期延長』→『非麻痺側歩幅拡大』

維持期脳卒中患者に対する歩行改善に向けた積極的介入は歩行パラメータ(歩行速度,歩幅)の改善を示唆する結果が得られた

維持期脳卒中患者に対する2時間の個別介入は
①歩行速度や非麻痺側歩幅を改善する可能性
②歩行特性である単脚支持期短縮及び前遊脚期延長の修正に寄与する可能性

<今後の展望>

サンプルサイズの拡大及び、介入終了後の長期的な追跡を行う必要性

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