ACADEMIC
脳卒中片麻痺患者におけるリーチ動作の特性
2019.11.22
ACADEMIC
脳卒中片麻痺患者における
リーチ動作の特性
2019.11.22
<背景と目的>
・脳卒中患者の多くで上肢の運動機能障害が見られる
・リーチ動作はバランス評価として実施される場合が多い
・麻痺側上肢の動きは到達範囲に着目される事が多い
・リーチ方向により動作を構成する運動要素は異なる
・到達範囲内における麻痺側上肢の動作の特徴は不明
どこまで動かせるか?ではなく、動かせる範囲をどの様に動かしているかが不明
<目的>
運動方向による麻痺側上肢の動作の特徴を明らかにする
方法①|対象者
・脳卒中による片麻痺を呈する自費診療リハビリ施設
利用者10名(男性7名、女性3名)
・ブルンストロームステージ(BRS)Ⅲよりも軽度の麻痺
・本研究の課題動作を端座位保持で行えるもの
詳細
平均年齢 (65 ± 7.3歳)
脳出血:5名 脳梗塞:5名
BRSⅢ:1名 Ⅳ:4名 Ⅴ:3名 Ⅵ:2名
方法|②動作課題
◇端座位にて測定
◇デスク上に●シール貼付
・デスク端から5cmの地点
・左右の斜め45°、25cmの地点
◇トレースマーカーをつけたボールを把持しシール間を往復
◇実施方向は4方向
(前後/水平/斜め)※斜めは2方向
◇各動作を最大速度で5回往復
(非麻痺上肢→麻痺上肢)
方法③|解析方法
・動画を解析ソフトKinovea(kinovea)にて解析
→速度の算出/軌跡の描写
・得られた軌跡はImageJにて解析
→軌跡で囲まれる面積/フェレー径の算出
方法⑤|同意の取得
・被験者に対し書面および口頭にて十分な説明を行い本人の同意を得行った
・ヘルシンキ宣言を遵守し、所属施設の倫理委員会の承認を得て行った(承認番号: 19-001)
・COI関係にあたる企業はない
考察|結果のまとめ
①対側前方へのリーチで動作が不安定
麻痺上肢は対側へのリーチが不安定であることを示唆する結果が報告されている(Levin, Brain, 1996)
>非麻痺上肢との比較や統計的有意差は示されていない
②麻痺・非麻痺ともに対側課題で遅くなる
>麻痺側上肢のみの特徴ではない
→対象者の病巣部位を限定しなかったにもかかわらず
全ての片麻痺の被験者で同様の傾向
麻痺上肢リーチにおける
対側前方への不安定性(同側の安定性)は
脳卒中患者に“共通する”特徴である可能性
「斜め前方リーチ」というように同じ言葉で表現される動作であっても、使用する上肢の同側・対側どちら方向であるかによって、運動を構成する要素が異なるためであると考えられる。
考察|まとめ・今後の展望
◇本研究では到達範囲内の運動方向による動作の安定性について検証
◇対側斜め前方へのリーチが不安定になる
→片麻痺患者に共通する特徴であることが予想される
◇比較的軽度の片麻痺患者や見た目上は上肢の動きに制限がない場合でも本研究で用いた対側課題において麻痺の影響が抽出される可能性は高い
運動方向による動作の不安定性を生んでいる原因を明らかにする